アーティスト探訪・プログレ編~ピンク・フロイド(その3)

・「MEDDLE](1971年)

 邦題は「おせっかい」(そのまんまか)。

 ブッチャーのテーマ曲でおなじみの「吹けよ風、呼べよ嵐」(ONE OF THESE DAYS)で始まるこのアルバムは、以前書いたフロイドのパターンで、A面は小品集、B面は大作、というもの。A面はこの、ブンブン鳴り響くベースが印象的なオープニングのほか、やはりリック・ライトの良質の情緒的なサウンドを聴かせてくれる曲、その他、「プログレ」というには穏健な感じの曲がそろっている(この傾向は,次のアルバムである「雲の影」(オブスキアド・バイ・クラウズ(綴りがあぶなくて書けない)・・これは何かの映画のサントラ盤らしいが・・でも同じ・・こちらの作品には「大作」は入ってない。)。

B面の「大作」である「エコーズ」は、フロイドの曲の中でも結構有名でファンの多い曲。なんでも、当時の山口百恵のアルバムに、この曲のイントロや雰囲気を丸パクリした曲が入っているらしい(聞いたこともある)。ある意味、非常にフロイドらしい、ちょっと幻想的な、ゆったりとしたサウンド。ただ個人的には、このアルバムはあとから聞いたこともあってか、あまり聞き込んではいないのである。なので、この「エコーズ」についても、それほどの思い入れがないというのが正直なところ。


・「DARK SIDE OF THE MOON」(1973年)

カルロス・ゴーン弁護で超有名人となってしまった、今や宮崎駿似ということでもおなじみの高野隆先生は、1973年に見に行ったピンク・フロイドの来日公演で、当時未発表であったこのアルバムがなんのMCもなくいきなり全曲演奏されるという、すごいシーンを目撃したそうだ。なんでも、誰も聞いたことのない曲に戸惑いを当初見せていた観客たちの間に、じわじわと感動の渦が広がっていったと、個人的に話を伺ったことがある。

このアルバムは、いうまでもなくこのバンドの不朽の名作であるとともに、まさにプログレ的なコンセプト・アルバムでありながら、奇跡的ともいえる圧倒的なポピュラリティを獲得した、ロック史上に残る名作であり、またロック市場的にも大セールスを記録したアルバム(ビルボード誌のトップ200に少なくとも700週以上ランクイン)でもある。

日本でも、当時トップアイドルだった天地真理のアルバムをオリコンチャートで抜いて一位になったそう(なお、「クリムゾンキングの宮殿」が、アビーロードを抜いて全英一位になったというのは都市伝説らしいが、こちらのオリコンの話は事実。)。

以前にも書いたとおり、ピンク・フロイドは、プログレッシブロックのバンドの中でも、かなりわかりやすい、ポップなサウンドを奏でており(これまで紹介してきたアルバムも割合そんなのが多いわけで)、広く大衆的な支持を音楽的にも集める素地は元来あったのだと思う。また、コンセプトも比較的わかりやすく(クリムゾンなどと比べると,やや陳腐なのかも知れないが)、そのあたりも多くの人々に受け入れられやすい面はあったのだと思う。

他方、サウンド自体全く陳腐ではなく、プリズムをあしらったシンプルなジャケットも相まって、作品全体として非常に高いレベルのものとなっていると思う。

個人的にこの作品に出会ったのは、中3か高1のころだが、イントロから一気に聞き通してしまう魅力があった。とりわけ、レコード時代のA面の後半「TIME」から続いて、ラストを飾った、これまたリック・ライトの一世一代の名作「THE GREAT GIG IN THE SKY」は、以前にも書いたけれども、まさに圧巻。初めて聞いて以来もう40年以上経つわけだが、何百回聞いてもこのスキャットは感動的である。この部分はいつも心して、集中して聞くのである。これがCDになってからは、この曲の余韻から一挙に「MONEY」の世界に流れ込むという、これまた新しい展開となるわけだが

本当に大切な1枚だ。

それにしても、音楽を文字化するのは本当に難しいわ。それこそ「陳腐」じゃ。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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