40年ぶりのコステロ~at すみだトリフォニーホール

エルビス・コステロは、私の中学時代にイギリスから登場した。

以前にもときどき書いているが、イギリス・パンク勃興の流れの中で人気をあげ、しかしいきなりカントリーアルバムを出してみたり、全米トップ40ヒットを出したと思ったら、超地味なアコースティック路線に走ったり、ポール・マッカートニー、バート・バカラック、アラン・トゥーサン等大御所との共作等々もあったり多彩な活動を経てきた。最初に公演で来日した際、詰め襟を着て銀座でトラックに乗って演奏したことは語り草となっている。

私も、最初期のかなり前のめりのサウンドには結構衝撃を受けたが「(i don't want to go to)

chelseaとか、accident will happenとか」、その後いろいろと方向転換をしているのをなんとなく追い続けてきた。サウンドそれ自体と言うよりも、なんというかコクのあるその歌声に惚れ込んだところが大きい。日本でも桜井和寿は明らかにその影響下にある、というのも以前にも書いたこと。


すみだトリフォニーホールは、以前ホール&トッドで、前のめりで後ろの席から注意されて興ざめになったことがあったが、今回は後ろの方だが1階席。乗り出してどうこうと言うことはなさそう。年齢層はやはり40~60代くらいが中心か。若者はほとんど見られない。女性も結構いた。

特筆すべきは、少人数だがいたダフ屋が、「券余ってない?」と聞いていたこと。おお、なんと券は売り切れ方向だったのか。ロッドの時は「券余ってるよ~」だったのだが・・。


19時よりスタート。アトラクションズで古くからのコンビのスティーブ・ナイーブ(オルガン・ピアノ)とのコラボ企画。いきなりギターにエコーを聞かせた音響的な音の曲で始まったが、そういうのは一部で、全体としてアコースティック・セットによる演奏が続く。とりわけ、コステロの歌を聴かせる部分が多かったという印象。また、コステロのアコースティック・ギターをかき鳴らす演奏、またナイーブのピアノやオルガン、ピアニカ等の縦横無尽の演奏が随所ではじけた。

正直、これまでにアルバムがたくさん出ているけれども、最近は購入してもあまり聞き込んでいないのが大半だったので、わからない曲が多いことを覚悟していた。しかし、思いのほか初期の「accident will happen」「peace love &understanding」「watching the detectives」といったところが、アレンジを大きく変えていくつも演奏されていた(「almost blue」もやってたな。)。個人的に嬉しかったのは、1981年の地味だけどもお気に入りの「trust」というアルバムより、「clubland」「shot with his own gun」などやってくれたこと。この「clubland」をサルサ風?にアレンジした演奏から、なんだか聞いたことがある・・おおっ「ghost town」by specials!・・ のさわりをやって、一気に「don't let me be misunderstood(悲しき願い)」になだれ込むというあの部分はすばらしく、また再現を聞きたい(無理か)などと思った。

ヒット曲「she」でいったん引っ込んだらすぐに出てきて(アンコールは当然のお約束という感じで)、落ち着いた風情の曲は、ボニー・レイットがやっていた「everybody's cryin' mercy」でおうっと思わず声を上げた(実はコステロもレコーディングしていたらしい)。観客を促して総立ちにさせた上、最後はこれまたお約束の「alison」であった。


思えば、前にコステロのコンサートに行ったのは、1985年だったと思う。まだ大学3年。前の年に振られた女性と連絡を取って出かけたが、ちょうどコステロが「デクラン・パトリック・マクナマス」という本名を名乗り、また「ザ・コステロ・ショウ」という名称で、それまでの若干きらびやかな路線(「only frame in town」とか「i wanna be loved」の入った「goodbye cruel world」というアルバムはこれはこれで個人的には好きだったのだが・・本人は気に入っていないそう)から大転換、「king of america」というアルバムをひっさげて、ピアノと生ギターのアコースティックセットの、全く一人でのステージという(あとの方でT・ボーン・バーネットが登場して雰囲気が変わったが)、ウルトラ地味な路線で面食らった(前の席では若い客が寝ていた)。40年の時を超えて、今回もアコースティック・セット中心のステージではあったが、こちらも年を重ね、耳も変わったこともあり(あえて、「肥えた」とは言わない)、純粋にもっとコステロの「歌」を楽しめるという心境となったように思う。独特の声は昔同様、むしろ昔よりもうまくなっているし、ギターテクニックも上がっているのではないか。常に控えめに振る舞っていたスティーブ・ナイーブを、コステロが何度もコールして盛り上げているのも微笑ましかった。丸々2時間のステージだったが、正直、とても贅沢な時間だったと思える。「みんな、明日も来る?違う曲をやるけど。」というようなことを言っていたが(それは無理だが)、今日やらなかった「i can't stand up for fallin' down」「blue chair」「veronica」「good year for the roses」(カントリー路線)「shipbuilding」「everyday i write the book」「コステロ音頭」(やんないか)等々も期待できるかな。 「punch the clock」や「goobye cruel world」収録の曲はやんないのかねえ。


まだまだ現役でよい作品を出し続けてほしい。










ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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