アーティスト探訪~プログレ編・ELP

ジャンルはいろいろだが、1960年代後半から70年代初頭にかけて、「スーパーグループ」というのが結構売り出していた時期があった。クリーム、CSN&Y、ブラインド・フェイス等々。また「スーパーセッション」(アル・クーパー、マイク・ブルームフィールド、スティーブン・スティルス等々による)なんてのもあった。ジョンレノンのプラスティック・オノ・バンドもそんな感じだし(クラプトンや、元マンフレッド・マンのベーシスト、のちのイエスのドラマー)、またストーンズの「ロックンロール・サーカス」で一回限りの結成となった「ザ・ダーティ・マック」(ジョン・レノン、ヨーコ・オノ、クラプトン、キース・リチャード、ミッチ・ミッチェル)もこれに入るだろう。


エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)もまさにその一角を担うバンドとして登場したのではないかと思う。元々「ナイス」というグループで、クラシックを基調とした独自のサウンドを奏でていたキース・エマーソン、「キング・クリムゾン」の初代ボーカルとして「21世紀の精神異常者」「エピタフ」「クリムゾン・キングの宮殿」といった名曲ですでに伝説を作っていたグレッグ・レイク、さらにアトミック・ルースターのドラマーだったカール・パーマーの3人組は、まさに70年代のロックのメガ・ライブに映えるパフォーマンスを,70年代において繰り広げていた。以前にも書いたかも知れないが、ELPのほとんど凱旋公演と言ってもいい1970年8月末のワイト等フェスの映像は、同フェスがウッドストックの幻想を打ち砕くような風情で行われていたことを前提として考えると、興奮する聴衆の姿も相まって自分にはなんとも複雑に映った(要するに,時代が大きく転換したと言うこと。同フェスに出ていたジミヘンは半月後に亡くなった。)。


デビューアルバムに入っている「ナイフ・エッジ」「石を取れ」等、2枚目のアルバム「タルカス」(視聴率は今ひとつだったが,大河ドラマ「平清盛」の音楽はまさにこれだった。)、3枚目「展覧会の絵」(nut rocker(つづりやばい。要するに「くるみ割り人形」の一節。)が有名)、4枚目「トリロジー」、そして最高傑作と言われている5枚目「恐怖の頭脳改革」(悪の教典第1印象なんたら、という曲が入っている。)まで、まさにプログレの1つの典型を示し続けていたのだと思う。当然、ステージを直接見たことはないが、映像で見るとやはり、エマーソンの攻撃的なパフォーマンスが特筆すべきものである。オルガンを揺すり,乗り越え,逆さから演奏し、果てはナイフを突き立てる等、今から見れば何なの?というような部分もあるが、曲のダイナミックさ(言い換えればおおげささ?)も相まって、聴衆に興奮を呼び起こすようなものであったと思う。

74年から3年空いて、77年に「4部作(works)」、78年に「作品第2番(works vol.2)」というのが出されたが、このころには皆の意識がバラバラになっていたようで、さらに折からのロンドン・パンク・ムーブメントの中で、まさにパンクスの批判の対象となるメガ・ロックの象徴のように言われたり、さらに79年には「ラブ・ビーチ」というバハマのナッソーの海岸で日焼けした3人(特にレイクはまん丸)が笑顔で写ったジャケットの「迷作」を出してしまって(とはいうもののきちんと通して聞いてない。渋谷陽一の「ヤング・ジョッキー」で聞いただけ。後述。)それまでのファンからさらなる非難を受け、解散に至ってしまった。その後、ドラマーにコージー・パウエルを招いて「エマーソン・レイク・アンド・パウエル」名で活動したり、エマーソンがソロで映画音楽をやったり、パーマーはエイジアで大げさサウンドを極め(後にレイクも参加)、さらに90年代に入って「ブラック・ムーン」というアルバムで再結成等と細々と活動を続けていた。


欧米のみならず、日本においても最盛期にはかなり人気は高く、音楽雑誌の人気投票では、1980年頃まではキーボード部門でいつもエマーソンがベスト5には入っていたと思う。ただ、なぜかプログレバンドの中では、個人的には一番とっつきにくかった面もある。のちの「エイジア」ほどではなかったが、やはりプログレの1つの特徴である「大げささ」をまさに体現していた面があり、クラシックベースで曲も長かったこと等もあって、実は一番食指が伸びなかった。いまとなっては前記のアルバムは全部持っていると思うが、一番気に入っていたアルバムが、比較的曲が短い「トリロジー」(「フロム・ザ・ビギニング」とかよい曲が入っている)、またその次がファーストアルバムだったりして、逆に77年「4部作」以降は断片的にしか聞いていないし、その前のものを本格的に聞いたのもCDの時代になってから(解散して以降)ではあった。友人ではまっている人が何人もおり、勧められたんだけど、私は次回語るピンク・フロイドとかのほうが好きだったんだよね。


もっとも、のちになって昔のライブ映像を見たりして、やはりその良さを感じたのは上記したとおり。そんなこともあって数年前にエマーソンのソロ来日公演を見に行こうとチケットを買ったのに、自殺してしまって公演はなくなってしまった。残念ではあったが、今から考えると来日のプロモ映像でも、ちょっと指が動いてない感じがあったので、相当悩んでいたのだろうとは思う。レイクもすでに鬼籍に入り、あのトリオでの生パフォーマンスは永遠に見られなくなってしまった。エイジアでもいいから見ておくべきだったのか・・。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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