アーティスト探訪・プログレ編~ジェネシス②

ピーターゲイブリエル脱退後のジェネシスは、フロントマンにフィル・コリンズを擁し、4人で、さらにスティーブ・ハケット脱退後は3人で活動を続けた。このメンバーで80年代に世界的な成功を収めることとなる。

ピーター脱退直後の2枚のアルバム(「a trick of the tale」「winds&wuthering」は、やはりプログレ色の強いアルバムではあり、プログレファンからの人気は根強い。ただ、個人的には、いい曲もあるけれども若干地味な感があり、英国色もやや(その2枚、3枚前のアルバム等と比べると)薄まっており、なんといってもピーターが抜けたことで、その存在から醸し出されていた狂気性も薄まっているように思う。なので、何度か聞き直すけれども、「おお、これは!」という感動に行き着くことがない(まだ聞き込み不足?車で聞いていたりしても、なんとなく聞き流してしまう。)。

スティーブ脱退(なお、この人はその後一時、スティーブ・ハウとGTRというバンドを作ったりしたあと、ソロで活動しながら、70年代のジェネシスを伝承し続けているよう。)で正式メンバーとしてのギタリストがいなくなり、78年「and then there were three(そして三人が残った)」という、小説のタイトルのようなアルバムが出る。個人的にはこのあたりからリアルタイムとなるが、最初の情報では、プログレバンドというほかに、ステージでライティングを多用するようなライブバンドということであった。このアルバムから「follow you follow me」という曲がシングルヒット(初めてアメリカでも)したが、かなりポップではあり、そんなもんかな、という感じであった。

次の2枚「duke」「abacab」でも、だいたい同様の路線ながら、徐々にアメリカ色、またポップ色を強めて行き、イギリスでのアルバム・シングルヒットのほか、アメリカでもそこそこのシングルヒットが出るようになる。「misunderstanding」「turn it on again(僕のテレビショウとかいう邦題)」あたりは個人的には嫌いじゃない。ライブ盤を挟んで84年に出た「genesis」というバンド名を冠したアルバムも、かなりポップになっていたが、ほどよくイギリス色があり、「that's all」のようにアメリカで大ヒットした曲も個人的には好きであった。

しかし、この間実は、歌心に完全に目覚めたフィル・コリンズが、ソロ活動を旺盛に繰り広げていた。なぜかこの人のアルバムは、いつも本人の顔写真のどアップ(すでに頭髪は著しく後退していた)。「in the air tonight」というかなり重苦しいがソロでの大ヒットがイギリスで出て(「genesis」の1曲目の「mama」は完全にこの流れの曲)、84年くらいだったか、アース・ウインド&ファイヤのフィリップ・ベイリーとコラボして、「easy lover」なんていう曲を出しやがってこれが案の上の大ヒット(日本でも)。これに完全に気を良くしたか、86年のバンドとしてのアルバム「invisible touch」は、冒頭の曲から馬鹿みたいに明るくて、本当に失望した。しかし、米国を中心に空前の大ヒットとなり、ついでにbass&guitaristのマイク・ラザフォードも「mike&the mechanics」というバンドを立ち上げて、出した(これまたポップな)アルバムを大ヒットさせてしまい、ここにジェネシスは完全に違うバンドとなってしまった(トニー・バンクスはなんとか踏みとどまっていたようには思うが・・ソロアルバムなどを聴くと)。

このあとについては、個人的にもあまり情報を得る気もなくなって、よく知らないが、時々アルバムを出したりして、最近は昔の5人で集まってライブではなく何か昔を思い出して語り合うような会合をやったこともあるよう。フィルコリンズはドラマーとしてはすでに引退しているが、今年は3人でのライブをやったらしい(コリンズはボーカリストとして。ドラムは息子に叩かせていたらしい。)。


なので、ジェネシスというのは、最初の方(ゲイブリエル・エラ)と、あとの方(コリンズ・エラ)では、メンバーが重なるのに全く肌合いが違うバンドとなっている。ちょうど、以前に書いたフリートウッド・マックのように。ただ、マックがさすがにブルースバンド時代の曲は後記にはほとんどやらなかった(と思われる・・一部を除いて)のに対し、ジェネシスはあとの方でも「firth of fifth」とか、「幻惑のブロードウエイ」とか(月影の騎士も?)やっていたようで、その意味では「ジェネシス」というバンドの流れ全体を1つのものとして、パッケージショウをやっていたのかな、などと思う。まあやはり、バンクスがキーボードで奏でれば、往年のジェネシスのサウンドは現れてくるのだろうが。

もしかすると、日本で言う「5大プログレバンド」の中で、もっとも商業的に成功したほうのバンドなのかも知れないが、それは1つには大幅な「転向」の産物である(まあ、YESなんかもそういう部分はあるが)とも言え、まあなんというか、といったところ。個人的には「invisible touch」を聞き込んで、「いいとこみつけよう」などという気にはなれない。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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