ライブ・レポート~caravan at 川崎クラブチッタ

外国との行き来もかなり緩和され、観光客も来るようになってきている。

来る10月に埼玉会で、韓国よりお招きするのであるが、これについても、入国や出国(自国への再入国)の際の制約がここにきてかなり緩くなり、招くこちら側でせねばならない対応も少なくなっている。

そういうわけで、来日ミュージシャンも増えてきている。

私の好きな、今では比較的高齢となられた方々も続々来日公演をするようになっている。


caravan。

1968年デビュー。英国・カンタベリー出身のプログレッシブ・ロック・グループ(英米ではプログレとは言わず、「prog rock」というらしい。)。

オリジナルメンバーは、パイ・ヘースティングス(ギター)、リチャート・シンクレア(ベース)、デイヴ・シンクレア(キーボード)、リチャード・コフラン(ドラムス)。今残っているのはこのうち、パイ1人だけ。

大ヒットアルバムがあるわけではなく、プログレファンの中で知る人ぞ知るバンド。その分熱心なファンも多いと思われる。

川崎クラブチッタは、長い私のライブ観戦歴においても、おそらく初めて来たと思う。川崎駅から徒歩10分弱くらい。椅子席で600名程度であった。

予想通り、会場に入ると、大多数の観客は50才を超えており(多分70代以上の人もいたと思われる)、また9割以上が男性。典型的なプログレのライブの様相である。そして、この日を待ってましたという感じで、ミュージシャンのロゴやイラストが入ったTシャツを着た人の多いこと。しかも、このバンドが2019年(新型コロナ蔓延の直前である)に来日した際に購入したらしいものを来た人が何名も見受けられた。私もそうだが、会場に入ったらすぐにグッズ売り場の列に並び、通常価格よりもはるかに高額のTシャツやタオル等を購入する。

正直、フロントマンのパイ自身がもう70代中盤(75才)なので、そういうバンドのなんとなく緩んだ感じの演奏が行われるのかなあ、などという見通しの下、直前には、楽しみと言うよりも、見ておかなきゃいけない、でもめんどくさい、というような感覚になっていたことも事実である。この日は午前中出身高校の同窓会の理事会に出席し、午後はいったん事務所へ行って若干雑務をして時間調整し、その後浦和から川崎に向かった。正直この行程はめんどくさかった。

しかし、やはりライブは良い。

本日のライブは、またも予想を裏切るよいものであった。

パイの左側で、代わりにMCを事実上担当し、バイオリン(ビオラだったらしい)やフルート、ギター、そしてパーカッション(スプーン?)を自在に操っていた人(ジェフリー)は、caravanのオリジナル・メンバーではないものの、5枚目のアルバム(夜ごと太る女のために(「for girls who grow plump in the night」))からメンバーであった人物(しかも、かつてペンギン・カフェ・オーケストラ等にも関わったらしい。)。そして、右側にキーボードで陣取っていた人物は、caravanのほか、やはりカンタベリー系では日本でも有名な「camel」のメンバーでもあった人物で、途中の機材の不具合などものともせず、技術は確かなものがあった。そしてそこに、若手(とは言っても50代かな)のベーシスト、さらに、イエス時代の若きビル・ブルーフォード(ブラッフォードとして日本では有名)を彷彿させるようなお茶目なプレイのドラマー(こちらは30代かも)が加わり、タイトな演奏が繰り広げられた。下に画像を貼った名盤「グレイとピンクの地」からは1曲を除きほぼ全曲が演奏され、その他2枚目、5枚目、さらに最近のアルバムからも演奏されたよう。

そして、これは全く期待していなかった部分なのだが、2部制(17:10~18:15,18:50~20:00)で行われた公演の後半で、バンドの後方に9名のストリングス(バイオリン・ビオラ・チェロ)が横一列に並び、共演。バンドの演奏にさらに厚みを加える、いわばシンフォニックなパフォーマンスが繰り広げられた。このような布陣でやることは、当日直前になり会場に置かれたパンフレットで知ったのだが、実際演奏を目の当たりにし、また聞いてみると、演者の表情が見えること等も含め、単に演奏に厚みが出た以上の効果があったように思われる。これは本当に拾いものだったし、またこの公演を見て良かったと強く感じさせられるパフォーマンスであった。明日もまた来たいと考えた人が結構いたのではないかと思う(しかし、おそらく売り切れているのではないかとも思う。)。時々、このようなクラシック布陣の共演がなされるケースはあるが、実際に見聞きすると想像以上の効果があるように思われた。

本割のラストにおかれた、「nine feet underground」(数年前にNHKFMのプログレ特集で、まさにこのcaravanにかつて所属していたデイヴ・シンクレアが参加しての演奏が聴かれた)の演奏の際、ジェフリーのギターの音声の調子が悪くて1人弾くのを断念していた場面は少し残念(かわいそう)であったが、とても70代のメンバーがメインのバンドとは思えない熱演が繰り広げられ、いいライブであった。

年齢的にも今回が最後の来日なのかも知れない。もう、60年代から活動しているミュージシャンの多くが、そのような時期を迎えている。寂しい話ではあるが、こればかりは仕方がない。しかし、昨今のロックの衰退や、ストリーミング配信等の普及によると思われる音楽の聴き方の変容については、個人的には受け入れられない部分も少なくない。やはり、アルバム単位でじっくり聞き込むような文化はなくなってほしくない。やけに長い曲はちょっと苦手であるが、10曲程度の曲で構成されたアルバムの、曲自体の魅力のほか、その並び等構成も含めてアルバム全体を味わうという文化も生き残っていってほしいとつくづく思う。

それはそれとして、やはりライブはよい。

カンタベリー系についてはあまり詳しくないが、次回書いてみようと思う。

キャラバンは、プログレ云々以前に、ある意味本当に「イギリス的」、イギリス色がプンプンするバンドである、と個人的に思う。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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