ライブ・レポート~23/4/17doobie brothers at日本武道館

私が今年になって出向いたコンサートは、いずれもアメリカのミュージシャンである。

これは、私史上においてはきわめて稀なことなんじゃないかと思う。

もともとイギリスのロックを中心に好んでいた私なので、米国勢が連発(しかも大物ばかり)というのはあまりこれまでにはなかったのではないか。

事実、私がdoobie brothersを見に行くといったら、同業者の友人が、意外、という感想を述べていた。

実際、私はdoobiesのアルバムを一枚も持っていない。借りてどれかのアルバムを通して聞いたこともない。それなのになぜ、行きたいと思ったのか?・・それは「直感」としか言いようがない。

もともと、日本ではイーグルスと並び、ウェストコーストの2大バンドというように語られていたと思う。しかし、日本ではイーグルスが「hotel california」の大ヒットで有名になり、これと比べるとdoobiesの知名度は今ひとつだったのではないかと思う(実際には今でも「LONG TRAIN RUNNING」とかCMでよく使われているのであるが)。doobiesは、自分的には80年代に、マイク・マクドナルドが実権を握ってから全米でヒットを連発した、その状況がリアルタイム経験であった。マイク・マクドナルドは当時は、いろんなミュージシャンのプロデュースをしたりもしていて、まさに時代の寵児のようであったが、少し前に書いた「AOR」路線のようなところもあり、個人的にはあまりしっくりはこなかった。70年代のバンドは、もっとファンキーな肌触りで、パトリック・シモンズや、トム・ジョンストンが実権を握っており、その頃とはサウンドが様変わりしているという印象であった。

今回、アルバムを通しで聴いたことのないこのバンドを敢えて見に行こうと思ったのは、パトリック、トム、そしてマイクが一同に会するというので、グレン・フライの死去でもはやもう見ることの出来ないイーグルスではないが、一度そのメンバーでの演奏、それこそ70~80年代を風靡したサウンドをまた感じてみたかったのである。

長年慣れ親しんだ武道館である。今度は場所を間違えるなどということはあり得ない。しかし、それにしても客の年齢層が高い!正直、ディランより高い。自分よりも明らかに10才以上は上の人たちが多数詰めかけており、武道館はほぼ満席であった(武道館では1回だけのようだが、全国各地でやるそうである。)。席は2回のスタンドだが、前から2番目と悪くない席(かつてのボストンとかディヴィッド・ボウイよりもいい席かも)。

アルバムを通して聞いたことがないのだから、当初の方は知らない曲ばかり。10数曲くらいそのような曲が続いた。しかし、演奏に力がある。ギター3人にベース、マイクマクドナルドのキーボード、それにドラムスが2名(もともとドラムス2名のバンドだったように思う)という大所帯だが、パット、トム、それにもう1人(ジョン・マクフィー)という3名のプレイが元気であった。マイク・マクドナルド主導の曲(カーリーサイモンがやってた「you belong to me」はマイクの曲だったのか?、それから「it keeps you running」「real love」「minute by minute」)は皆知っていたが、その一連の曲の時に低音ベースの音がひずんで聞きにくかったのがやや残念であった。新曲も4曲ぐらいやり(そのように紹介していた)、こちらもディランではないが、現役感を示そうという気合いが感じられた。

でも、このバンドはディランとは違うから、おそらくヒット曲が演奏されるはずだ。50th aniversally tourなどと銘打ってやっているんだから当然でしょ、などと思っていたら、後半はすごかった。「jesus is just all right」「what a fool believes」「long train runnin'」「china grove」と立て続けに演じられていったん引っ込み、アンコールでは私がこよなく愛する「black water」に、マイク・マクドナルド演奏の曲(「georgia on my mind」のような感じ)が挟まり、最後は「listen to the music」と、往年のファンも皆満足というラインナップで終了した。2時間20分にわたる演奏であった。


今回、このバンドの曲をまとめて聞く機会に改めて感じたのは、(少し前記もしたけれども)ほとんど別のバンドが共存しているかのような感覚であった。私の好みである70年代中盤のパトリック=トムの時代のものと、80年代のマイクの時代のものは、別のバンドという感じであった。このあたりの違いが、80年代前半にバンドの解散へと繋がったのだと思うが、改めて聞くと、同じウェストコーストサウンドとはいっても、イーグルスともかなり毛色が違う、特に70年代は南部色が強い(CCRとかの香りもある)、ファンキーなアメリカンロックであった、という印象を改めて抱いた(個人的には初期のイーグルスのようなカントリー色はそんなに濃くないんだな、と)。

しかし、全体として本当に良いコンサートであった。アメリカのバンドはあまり好んで聞いていなかったのだが、そもそももうロックミュージック自体が終焉を迎えようとしている中、その本質的な部分を体現していた人たちの奏でる音には、やはりうれしいものがあった。ラインのオープンチャットとかでも、Facebookでこのコンサートがとても良かったという情報が流れている、との書き込みがあり、さもありなんというところであった。最後のヒット曲数連発は、個人的にもうれしいものであった。


新型コロナもいちおうの落ち着きを見せ、こういったベテランのグループが堰を切ったようにやってくるような感がある(実は同時期にクラプトンも100回目?の武道館公演をやっていた。今回は行かなかったが。)。やはり元気なうちに見に行っておきたいと最近はつくづく感じる。それにしてもサマソニはどうしようか。ブラーは見たいのだが他のラインナップが今ひとつ。むしろ深夜にやる「SONICMANIA」のほうが期待できるメンツなんだけど・・。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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