渋谷陽一の追悼番組が本日オンエアされた。
山崎ロッキングオン社長のほか、チャボとか吉井和哉、佐野元春(音声で)、伊藤正則(せいそく、という呼び名が渋谷陽一由来とは知らなかった)、大貫憲章(音声で)、サンボマスターの人等、多数のゲストが出演。正直、いろんなエピソードは頷けるような話ばかりで、思わずにんまりしてしまうようなものも多く、寂しくも楽しい時間だった。13:30開始と思っていたら実は1時間くらい前に始まっていたらしく、あとであらためてジムで運動しながら聞くなどもした。
渋谷氏と言えば、この「Remain In Light」でも一悶着(以前も書いた)。
ニューヨーク出身の4人組、まあくくるとすればニュー・ヨーク・パンクのカテゴリーに入っていたTalking Heads(いわゆるパンクという音楽性とは違うが。そもそもニュー・ヨーク・パンク自体が、テレビジョンからパティ・スミス、ラモーンズ、ブロンディまで大変幅広く、またヘッズなどはかなりアート指向が強かった)が、このアルバムで大胆にファンク路線を選択して大変貌を遂げたのみならず、パーカッション等で多くの黒人ミュージシャンを登用したサウンドを展開した。これは当時の最先端のサウンドということで、評論家の間でも、またミュージシャンの間でも、結構な評判を呼んだが、渋谷氏は、そもそもロックが、白人が黒人音楽のビートやグルーブを自分たちなりに消化し、ぎこちないながらも自分たちのものとしてきた、そういうものであったのに、ここで本家の黒人ミュージシャンを大量に入れてサウンドを作ってしまったことについて、異を唱え、かつ、これを無条件にもてはやした音楽ジャーナリズムを強く批判したのであった(そんなようなニュアンスだったと思う。)。
正直、私はこのアルバム、2回目に聞いて(最初にうえちゃんに聞かされたときはピンと来なかったが、2回目で)本当に衝撃を受け、その後はベタはまりであった。イントロの「Born Under the Punches」から始まって、全曲捨て曲がない、独特の緊張感、言いようのないグルーブ感、まさに「Once in a Lifetime」というような、それまでに聞いたことのなかったようなサウンド、ロックとかファンクとか言う壁をいとも簡単に乗り越えてしまうような音の世界に大変感銘を受けて、この1980~81年には何度繰り返して聞いたかわからないぐらいであった。洋楽ロックの世界に足を踏み入れて5年ほどであったが、新たな地平が見えてきた感じがした。何というか、ロックというものに対する固定観念が吹っ飛び、ファンク・ミュージック、また、偏見を持っていたディスコサウンドも含め、他のサウンドへのハードルが、一気に下がった感じもした。意外と知らなかったなと思ったのが、これもイーノのプロデュースだったのね(考えてみたら、「My Life in the Bush of Ghost」とかあったし、前のアルバムもそうだったようだし、そりゃそうか。)。ベルリン三部作といい、本当にこの人は偉大だ。
そんなわけで、渋谷氏による評価も当時当然知っており、確かに言われてみればそのとおりかもしれないな、と思いつつも、いやあ、そうはいってもこの衝撃性は捨て去ることは出来ない、やはり名盤でしょう、などと思い込んでおり(正直今でもそう)、それはそれだよな、やはり音楽関係の文筆の道とかに行かなくて良かった、などと時に考えたりもしていた。
私の「この一枚」からは絶対に外せないこのアルバム。もうかれこれ45年も前に出たんだね。でも今でも当時の衝撃と、これに出会ったことへの至福感、その肌合いは本当についこの前のことのように甦る。
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