アンコンシャス・バイアス

この言葉、数年前(10年前よりも最近)くらいから、性差別に絡んでよく耳にしていたもの。

要するに、人々が抱いている価値観の中に、無意識のうちに性差別的な観点がその土台として存在し、その価値観を基礎付けている、ということだろうか。


今回のロシアの侵略に絡む報道や言説で、この「アンコンシャス・バイアス」という概念が、改めて自分の中でクローズアップされている(徐々にそのような指摘をする言説も現れている)。

今回のウクライナ侵攻、特にヨーロッパにとっては、他人事とは思えない、という話だと思う。それ自体は理解できる。ヨーロッパないしそこに隣接する地域において、今回のロシア(というか、プーチン一味)のような、主権国家の枠組みを踏みにじって拡張主義的な大規模な戦争行動が取られたこと自体が、(2014年にすでにクリミア侵攻はあったのだが)1939年の第2次大戦前のナチス・ドイツの一連の侵攻以来の話なのだろうから(もちろん、ハンガリー動乱(1956年)やチェコ事件(1968年)におけるソ連の侵攻というのはあったわけだが、このころのこれらの国は、COMECON・ワルシャワ条約機構等で縛られ、事実上ソ連の属国状態であった。)。

ただ、背景となる国際情勢は様々とは言え、このような他国への攻撃、それに伴うその地域に住んでいる一般市民の方の生活基盤の破壊、人権の蹂躙という状況は、ヨーロッパから目を転じれば、当然ながらこの30年間(冷戦終結と言われて以降)もずっと生じ続けていた。

しかしながら、「私たちと同じ碧眼金髪の人々が蹂躙されている」「21世紀の今、このような状況が生じている」などという、ある意味分かりやすい言説すら、欧米の巨大メディアによって流布されている。

これこそまさに、「アンコンシャス・バイアス」を背景にしている。


例えばアフガンで、シリアで、イエメンで、イラクで、そこで生活していた人々の生活は、今回のウクライナとは比べものにならないほど破壊されている。そのことについて、自分も含め、どこか「ああ、またやっているのだな.」「あの地域は、いつも紛争やっているからな。」などという感覚を抱いていたのではないか。


今回のように、報道陣があえて攻撃を受けている市民のすぐそばから取材し、報道し続けているというケースも、これまでにないものと言えるが、そのことも含め(ロシア側=プーチン勢力)、これまでになく被害者側への救援の声が世界的に広がっている、と思うのは、いわゆる先進国のみなのかも知れない。

実際、中東諸国やアフリカ諸国、中南米諸国、さらにいえば東南アジアからの声も影が薄い。経済制裁についても東南アジアですら消極的なよう(これまでのロシアとの関係性もあろうが。なお、インドは中国との対立を背景に、中ソ対立の時代も含め、伝統的にロシアとの関係が深いことは有名。)。


今回の件がこれ以上専制男(=プーチン一味)によってエスカレートされないことをただ祈るしかないが、今回の件は、また改めて、国際情勢やそれに伴う一般の人々の生活というものに対する見方、捉え方を、根本から問い改めさせるものになっていると思われる。


それにしても、このこととは別に、予想はしていたが、ロシア人やロシア料理店、その他ロシア関係の人々に対する攻撃もひどいようだ。こういう輩はこういう輩で、プーチンと同じ墓穴にぶち込んでやりたいというのが、(あってはならないが)本音である。最近、匿名であることでやりたい放題の輩がはびこりすぎている。SNS等の表現手段が大きくはびこっている社会においては、表現の自由というものの捉え方も更新されざるを得ないのではないか、などと真剣に考えるようになっている。是非とも憲法学者の先生方には、ステレオタイプの伝統的な思考から一歩踏み出し、このあたりの研究をして頂きたいと切に願う。規制の線引きが難しいという伝統的な議論があることは承知で、やはり、全く守る価値のない言説(というよりも他者に対する害悪をまき散らすだけの言説・責任を何ら伴わない言説)というのは存在すると言わざるを得ない。それがどういうものなのか、の基準(捉え方)はどうしても個々の人々の主観に任される部分があるが、実際、表現の自由に限界があること自体は自明で、一定の言説を「名誉毀損」と捉えうる訳なのだから、そこを表現主体の匿名性(しかし、確実にその主体は存在し、かつ特定は可能)といったところを手がかりに、一歩さらに進めて欲しい。そうしないと、いつかこの社会は成り立たなくなる。おそらく。伝統的な憲法学ないし表現の自由に関する知見が、それが議論されることの基盤を成り立たせていた社会を崩壊に追いやっては、元も子もない。


保守的な立場というのは大事だが、ただ保守的なだけでは、自らの首を絞めることにもなる。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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