レッド・ホット・チリ・ペッパーズ来日公演~23/2/19at東京ドーム

このバンドを初めて知ったのは、1990年代初頭の頃。

80年代後半以降、ちょっとイギリスのヒットものに食傷気味となり、アメリカのカレッジチャートの情報を仕入れるようになっていた(当時発売していたシンコーミュージックの「crossbeat」という雑誌・・ロッキング・オンの向こうを張って出てきた感じだったか・・に情報が載っていた。第1号の表紙はデヴィッド・バーンだったと思う。とっくに廃刊になっているが。なお、よけいなことだけれど、この雑誌にはまだ無名だったリリー・フランキーが、エグいイラストを描いていたのだ。)。

80年代中期頃、REMがブレイクして注目を浴びたカレッジチャート。そこから新たな風がいろいろ吹いてきていた。80年代前半に英国ニュー・ウェーブで感じたのと同質の流れ。その中で、独特のサウンドを聴かせてくれていたのがレッチリ。

それまでのハードロックとはひと味違う、当時勃興してきていたラップやヒップホップの要素を取り入れ、また明らかにファンカデリック等のファンクミュージックも基本においたサウンド。「mother's milk」「blood sugar sex magik」というアルバムにハマった。ジミヘンの「fire」、スティービー・ワンダーの「higher ground」のカバー、またオリジナル曲も秀逸で、特にベースのfleeが奏でる音が言いようもなくかっこよかった。91年頃には、黒人男性への警察官の暴行・死亡事件(未だたびたび再発が見られる米国の根深い問題)に端を発した「ロス暴動」をテーマにした「under the bridge」が大ヒット、全米級の人気バンドにのし上がった。私が試験に受かる少し前の頃のことである。

個人的には、その次の2枚のアルバムくらいまではそこそこフォローしていたが、徐々に発表されるアルバムで奏でられる音はおとなしい(ミディアムな)感じになってゆき、ちょっと初期衝動からは離れ、熱心な聞き手ではなくなっていた。

それが昨年、1年で2枚のアルバムを久々に発表。こちらも久々に2枚とも購入。特にあとの方のアルバムには、前にも書いたエドワード・バン・ヘイレンに捧げた「エディ」という曲が入り、これがよかった(ジムで先行的にかかっていたもの)。

そんな中で、久々の来日(夏フェスにはちょくちょく出ていたようだが、単独ライブは17年ぶりのよう)。やはりこういうバンドは生きのいいうちに見ていこうと、大変高いチケットを購入。

会場に着くと大変な人。こんな規模のコンサートは本当に久々である。クラプトンの武道館もこんなにはいなかった。しかも年齢がクラプトンとは比較にならないほど若い(20~40代中心か)。男性8割。一人ひとり体温チェックがいちおうなされていた。

東京ドームの2階席はいうまでもなくステージまで果てしなく遠い。ほとんど豆粒のようなパフォーマーの姿といった感じ。まあ、傾斜がきつい分、前の人の頭を気にすることもなかったわけだが。

オープニングとともに、すでに2階席はほとんど立ち見状態となり、最後までそれで走る。

正直、知らない曲もあった(というか、どこかで聞いたことがある曲が大半だった)が、時間を忘れるようなパワフルなライブであった。もともとは小さなクラブなどでライブを繰り返してのし上がってきたのが30数年前だが、未だにライブハウスのような感覚で特にボーカルのアンソニーとベースのフリーが駆け回り跳びはねる。ドラムのチャド・スミスは乾いた力強いサウンドでフリーとともにサウンドの核を担う(このドラムも結構好きなタイプだ)。そして、3年前に復帰したというジョン・フルシアンテのギタープレイは、特に「エディ」で本当に白眉というものであった。エドワード・バン・ヘイレンの向こうを張るような早弾きの応酬で、曲が終わった際には周りの席から感嘆・感激の声が多数上がっていた。

アンソニーのボーカルは、私がこのバンドを初めて知ったときから変わらず。時にラップやヒップホップ超の曲でも同じ。古い曲から新譜に入った曲まで。アンコールは「under the bridge」「give it away」。フリーのMCが多かったのが印象的であった。時々ジョンとフリーが向かい合って即興的にギター・ベースの絡みをやる、ビリーズ・ブートキャンプで鍛え抜いたかのようなアンソニーとフリーのムキムキの体で約2時間を走り抜けた。こいつら若いときはドラッグとかけっこうやばかったはずなんだけれど・・。


正直、このようなハードロックの本格的なライブは久々であった。ミディアムテンポの曲でも音圧も十分だし、またフリーの縦横無尽に走り回るパワフルなベースラインが腹の底からたたき込まれ続けた感じ。このバンドはやはり、ライブが真骨頂なのだとつくづく感じた。まだこんなにたくさんいたのか、というロックファンたちの、今夜は本当に至福の夜であったと思う。帰宅後YouTubeにもうライブ映像がアップされていたのには驚いたが。いずれにしても、wowwowで収録したそうなので、一瞬契約することも考えたい。


あとで確認したら、メンバーはジョン・フルシアンテ以外みな、60代なのだそう。正直、驚愕である。私より上だったとは(まあ、考えてみれば,80年代後半には2枚くらいアルバム出していたのだから,そういうこともあるか・・しかし、「blood sugar・・」のころはすでに30才くらいだったとは、結構苦労人であった・・。)。

「昔の名前で出ています」感は絶無であった。ほんとうにすばらしいものを見られた。見に行ってよかった。

さて、明日は依頼者が遅刻しないことを切に祈るだけだ。モーニングコールをしつこくせねばならない・・。


ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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