スミスの登場は、衝撃的、と言うよりも、なんというか、「イギリスはこんな闇を抱えているのか」という感じで、ふんわりと受け止められるものであった。83年ころからインディーズチャートの上位を占めていると言うことで注目していたが、その後はアルバムを出す度にナンバーワンを記録していた。
ゲイを公言するモリッシーの、グラジオラスをジーンズ後ろポケットにさしてのくねくねダンス、ジョニー・マーの時に激しく、時に感傷的な、そして繊細なギターサウンドに、絶妙に絡む、他に類を見ないようなスタイルの(息を抜いたような)その歌声(ピーターバラカン氏は、生理的に受け付けないと仰っていたが、それはわからないでもない。そのくらい個性的ではあった。)。歌詞も時に自虐的、時に政治的・攻撃的であり、イギリス以外ではあまりヒットしなかったようだが、それ故に「イギリス的」なバンドとして強い印象を残した。
「hand in glove」「still ill」「heaven knows i'm miserable now」「how soon is now」「this charming man」「suffer little children」(oh the manchester, so much to answer for)「william,it was really nothing」「panic」「shoplifters of a world unite」「death of the disco dancer」・・等々他にも印象的な曲がたくさん。アルバムで言うと、「the smith」「meat is murder」「the queen is dead」「strange ways here we come」の4枚に、コンピレーションで、「hatful of hollow」(綴り危ない)「the world won't listen」等々。シングル盤はいつも、印象的な名優などの肖像を使い、また多くの曲がこれまた印象的。
そういえば当時は、12インチシングルというのがはやっていて、スミスのほかにスタイル・カウンシルなども、きれいなジャケットでいろいろ出していたなあ。
1982年から87年という、本当に短い期間で走り抜けたバンド。当時のイギリスのロックシーンを象徴するバンドであったことは間違いない。
解散後は、再結成という噂もありつつも、結局実現せず(私は、モリッシーのソロライブを2回、それにジョニー・マーが参加したthe theのライブも見に行っているが)。モリッシーとジョニーなら一緒にやる可能性もあるのかな、などと思いつつ、その後アンディ(スミスのベーシスト)が印税問題で、ドラマーのマイク・ジョイスとともにモリッシーを訴えた、なんてこともあって、もう再結成は無理と思っていた。
そして、アンディが59才の若さで他界。これでsmithsのオリジナルメンバーでの復活は永遠についえた。膵臓ガンだったそう。一時期のニュースでは、かなり素行も悪いとか、いろいろ言われてしまってはいたのだが。
訴訟にまでなり決定的な関係の途絶となったと思われたモリッシーが、アンディの死に対しコメントを寄せていた。純粋に追悼の内容であった。皆還暦を過ぎ、かつての話はそれとして、思いを寄せているのだろう。
モリッシー&マーは、おそらくレノン&マッカートニーとか、ジャガー&リチャード等にも引けを取らない、すぐれたコンビなのだと思う(基本的にモリッシーが詩を、マーが曲を書いていたが。)。そこにアンディ・ルークとマイク・ジョイスが加わり、唯一無二のスミスサウンドが展開されていたわけ。いまでも時々聞き直し(実は後半の方のコンピレーションとかはあまり聞き込んではいなかったのだが)、新たな発見が得られる、個人的には本当にすぐれたバンド。
それにしても、まさにリアルタイムで、登場から終わりまでを見つめ続けたようなバンドのメンバーが、いよいよ亡くなるという時代になってきたのだなあ。
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