ライブ・レポート~monochrome set 外 at 渋谷WWWX

モノクロームセットは、イギリスのバンド。

パンク勃興後の1970年代終わり頃に登場し、息の長い活動を続けている。

大ヒットはないけれども、特に80年代前半においては、ポスト・パンクシーンにおいて重要な位置にあったと思う。当時隆盛であったニュー・アコースティックの系列にもあり、また独特の前のめりのちょっと奇妙なサイケデリック・ポップな音がとても魅力的であった。

個人的には、80年代の活動しか知らず(その後息長く活動し、アルバムを出し続けていたとはつゆ知らず)、しかしそのころの「STRANGE BOUTIQUE」「ELIGIBLE BAUCHELORS」「THE LOST WEEKEND」といったアルバムは持っていたりする。一人暮らしをしていた頃、このバンドの曲を留守電のバックに入れたりなどもしていたほどである。具体的な曲名は実はあまり知らなかったりするのだが、肌が合うのだ。インドとアメリカとの混血というボーカルのビドの独特の歌声と、前記したような曲調が大変肌に合った。


渋谷の公園通りの方面、渋谷パルコの隣にある今回の会場(立ち見で500人も入るかどうか)は、初めての場所。駅からそんなに遠くないと思ったのだが、渋谷というのはなんでこんなに人が多いのか。どこから湧いてくるのか、といった感じの混み具合。外国人観光客もいるが、若い連中がほんとうに多い。みんなちょっと出かけてきてみるんかね?新宿や池袋とは客層が違う感じがする。

観客は、同世代くらいかと思っていたら、以外にも若い顔もちらほら。往年の「渋谷系」の源流にあったのかもなどと思った。チケットはソールドアウトとのこと。この会場のオープン5周年記念企画ということで、呼び屋さんの「クリエイティブマン」とコラボして招へいしたらしい。

前座といっては失礼だが、PHEWと立花ハジメバンドも登場。いずれも日本のパンクやテクノシーンにおいては70年代以来有名な方。17時開始で、最初の45分はPHEWの、ひたすら打ち込みの曲というか電子音が延々と続く。ソニックマニアへ登場するのもよい感じ。延々続く電子音はどこに連れて行かれるのだろうかなどと思いをめぐらせてゆき、最後は本人の歌が少し入って終了。未だにこういうのは「実験音楽」なのだろう。立花ハジメは名前だけは昔から知っていたが(プラスティックスだったか。YMOの周辺の人でもあった。)、最初は本人のみでギターをひたすらかき鳴らし、2,3曲後にドラマーだけ入ってまた2,3曲、その後バンド構成で数曲。Hm(ハーマイナー)という名前のバンドだったが、なんというかラフな感じ・・立花氏がラフだったのだと思うが、なんだか素人バンド的な趣すら醸し出しながらのステージ。ギタープレイが少し遅れ気味になったりもあけすけにやっていた。あとで確認したら、坂本龍一や高橋幸宏と同年代のよう。サックスの人がキレキレのすばらしい演奏をしていた。矢口博康という聞いたことがある人だったのであとで確認したら、やはりキャリアが相当な人であった。

「幕間」に脇の壁に、パンク時代のイギリスの様子を語る、チェルシーでお店をやっていた人たちのインタビュー映像(道を挟んで向かいにマルコム・マクラーレンやヴィヴィアン・ウエストウッドの「SEX」があったそう)、また当時のクラッシュ、ピストルズ、ダムド、それにジャマイカにジョン・ライドンが行った時の映像、またいろんな当時のレゲエミュージシャンの映像などが映し出されるなどして、演奏の合間を埋めた。それにしてもやはり初期パンクの衝動は改めて聞いてもすごい。また80年代初頭はレゲエやスカに影響されたバンドがたくさん出てきていて、本当に英国音楽シーンは活気があった。80年代中期の「第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン」の前の話。

そういうわけで、モノクローム・セットが登場。ビドのほかは多分ベーシストが昔からのメンバーで、キーボーディスト(このバンドでは重要)とドラマーはあとから加わった人のよう。演奏は、やはり知らない間もずっと活動していただけのことがあり、現役感がみなぎっていたが、曲間のMCなどはなんともリラックスした感じで、途中でベーシストが、WWWX5周年を祝ってハッピーバースディの曲を鼻歌で歌い出す等もあった。もちろん、知っている曲も数曲あったが、知らない曲でもみなこのバンドの音でありフレーズでとても心地よい時間だった。一曲一曲をあえて短く切っていたのか、時間としては1時間ちょっと程度だったが、10数曲演奏。アンコールも入り、出てきたところでビドが1人で歌ったのが、トレイシー・ソーンもカバーした「GOOBYE JOE」。そうかこれがあった!と歓喜。アンコール前あたりから、日本人の比較的若いギタリストが1人参戦し、ギターポップ・ロックの熱いコラボとなった。

立ち見である程度の時間だったので、首や肩あたりが痛くなったりもしたが(立ち見というのは意外と動きがなく、体が固まるのである)、前から3列目あたりとほとんどかぶりつきの場所で見ることが出来た(特別席と言うことではない。前へ行けてしまったのである。)。観客も、年齢層もあるがお行儀が良い人が大半で荒れることはなかった(もともとファン層がそうなんだろう)。

このバンドのメンバーもオリジナルは自分よりも数才上、つまりもう高齢者の域に達するのである。80年代中期のバンドでもこんな感じなのだなあ。でもそのようなことを感じされられることのないビドの変わらぬ歌声に、心をリフレッシュしてもらった。






ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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