先日購入したレコード・コレクターズ紙に、えっ?というような死亡記事がいくつか。
リック・バックラー(ジャム)
こちらは別筋で聞いてはいたが、まだ70いったかどうかという感じ。
ジャムは、ロンドン・パンク勃興の76~7年に登場し、その後82年の解散まで、イギリスではずっとトップグループとして君臨した。
ポール・ウェラー(ギター)、ブルース・フォクストン(ベース)、それにリック・バックラー(ドラムス)のスリーピースバンドは、パンクの中でもとにかくシンプルな疾走感を売りにしていた。往年のモッズ・スタイルで、「イン・ザ・シティ」の当時のプロモーションビデオ(演奏シーン)は今見てもとてもわくわくさせられる(ポールは多分まだ18才!)。「スタート」でのジョージ・ハリスン愛、「ディス・イズ・ザ・モダン・ワールド」、「イートゥン・ライフルズ」等々、皆3分以内の小気味良いサウンド。最後期は「town called malice」などモータウンサウンドに接近するような音も聞かせ、その後のスタイル・カウンシルに繋がっている。このバンドの屋台骨を支えたリック。今さらという感じだが、もう再結集しての演奏はなくなった。
ジェイミー・ミューア(元キング・クリムゾン等)
90年代初頭頃に初めて見た、クリムゾン第3期(1972年ころ)の名盤「太陽と戦慄」の、アメイジングな演奏動画で、パーカッション担当で謎の動きをしていた人物。在籍期間はわずかだったが、とても強い印象を残していた。この映像は当時本当にショッキングで(今では容易に見られるが)、ロバート・フリップのほか、やけにかっこいいビル・ブルーフォード(ドラムス)、エイジアの印象とは全然違うジョン・ウェットン(ベース)、バイオリンで別の彩りを加えるデヴィッド・クロスというメンバーの、それぞれの演奏に食い入るように見入った。
マイク・ラトリッジ(元ソフト・マシーン)
このニュースは本当にショックであった。
この人、今はどうしているのだろうと思っていたので。
ソフト・マシーンのオリジナルメンバーで、少なくとも5,6枚目のアルバムまでは参加していたと思う。オルガンで、まさにこのグループのサウンドの重要な部分を担っていた。初期のサイケデリック期から、プログレ、そしてジャズ・ロックにぐんぐん入って行くまで、この人のオルガンサウンドは本当にポイントになっていた。
以前、「ハモンドオルガン」というテーマで書いた時にも触れたが、私のお気に入りの音の1つが、このマイク・ラトリッジが奏でる音である。ソフト・マシーンについてはまとめて記載したことがないが、1枚目のサイケデリックサウンド、2枚目の徐々にジャズやプログレに入り込んで行く時期、そして3枚目(レコードだと二枚組で計4曲!)の、過渡期ともいえるがジャズ・ロックとプログレの合間のようなサウンドは、ロバート・ワイアット(ドラムス)、エルトン・ディーン(サックス)、ヒュー・ホッパー(ベース)にこのマイクのオルガンが錯綜して、本当に緊張感と高揚感のあるすばらしいものになっていた(ジャコ・パストリアスは、ソフト・マシーンのことを、ジャズもどきというような感じで嘲っていたようだが、そんなことは関係ない。)。長い曲が多いのでとっつきにくい面はあるのだろうが、個人的には今でも時々聞き直している。
このソフト・マシーンやキャラバン等に代表される「カンタベリー・シーン」というのも、深堀すると戻ってこられないような音楽シーンだが、永遠に残ってもらいたい個性的な「ジャンル」である。
もう83才だったそうだが、先年キャラヴァンのステージを見ることができたこともあったので、また勇姿を見たかった。
これでソフト・マシーンは、オリジナルメンバー、及び3枚目あたりまでのメンバーで存命者は、手負いのロバート・ワイアットだけになってしまった。もう50年間も半身不随の生活を送っているロバートが最後に残ったというのも、何の因果か。
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