エリック・クラプトンの「芸歴」は、ほぼ私の生涯と重なる期間である。
ルースターズから、ヤードバーズ、ジョン・メイオールズ・ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク&ドミノス等といったグループ活動を経て、1970年以降はソロミュージシャンとして、そこからでももう55年、この3月でついに80歳、日本で言う「傘寿」になった。
そのクラプトンが、またまた来日。今回は武道館で10日間近くやるようだ。もういくつかの公演はソールド・アウト。今回の来日で武道館公演は100回を超えるらしい。
数年前に、ワールド・ツアーからの引退を宣言したが、日本は別枠のよう。今年も2年ぶりにやって来てこのような多数回の公演。よほど日本に愛着があるのだと思うが、さすがに80歳だしどうなんだろう。チケットとっても高いし。そんなふうに思いながらも、私自身も1985年に最初に見に行ってから40年、6回目の観戦となる。
会場付近には30分より少し前につく。当然年齢層は高いが、それでも30代くらいの顔もちらほら見られる。ビッグネームだし、「ティアーズ・イン・ヘブン」なんていう普及版的なヒット曲も出したりしたので、それなりにファン層は広いのだろう。人であふれかえっているグッズ売り場を横目に見ながら、2階席へ。ここは本当に傾斜が怖いんだけど、見やすい。2階だけれどほぼ正面の席。そう言えば、初めて外タレ来日公演を見に来たのは1979年4月で、武道館であった(ボストン)。私は何回武道館に来たのだろう。武道の試合できたことは一度もないが。
客席はほぼ満員。チケットの値段からして、一晩で二億近い収益があるのだと思う。それだから来日はやめられないのだろう、一度のツアーで20億か、などという下衆な見方はこの際やめておく。
それにしても、オープニングでいきなり「ホワイト・ルーム」とは恐れ入った。クリーム時代を改めて振り返る感じでやってるのか?85年の時は、「BACK TO 1967」といってやっていたな。個人的には結構よいイントロだったが。
2曲目でいきなりブルース調の曲(キー・トウ・ザ・ハイウェイ)。そして三曲目が何と、「I'M YOUR HOOCHIE COOCHIE MAN」だと。なんて喜ばしてくれるんだよぢいさん!さらに「SUNSHINE OF YOUR LOVE」とまたもクリーム。おいおいおいおいおい。何かいい感じだね。
ここで一息ついて、アコースティックの部に。クラプトンはくだんの「アンプラグド」の取り組み以来、結構アコースティックセットでの演奏にも力を入れており、以前の公演でもそのような場面が多かった。特にジェフ・ベックといっしょに来た際には、全部そんな感じで、ちょっと眠気が来てしまった感じもあったのだが、本日はほどよい感じで数曲。しかもブルース色の濃いセットでよかった。例の「ティアーズ・イン・ヘブン」もさらっとここでやってしまった。
その後、またエレクトリックセットに戻り、最初は「バッヂ」。クラプトンはライブで結構この曲をやることが多い。ジョージ・ハリスンとの共作だが、クリームの曲としては、まあスマッシュ・ヒットをした程度の曲であるものの、やはり取り上げる頻度が多いのは、クラプトンのハリスンへの1つのリスペクトの表れなのだろうか。それから、本日は(本日も?)、ブルースベースの曲の渋くかつ重い演奏が多かった印象も強かった。「HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN」かとおもったら違う曲だったが、その曲もとてもよかったし、ベースのネイザン・イーストが、ウインウッドのボーカル部分を高温で歌い上げた、ブラインド・フェイスの「CAN'T FIND MY WAY FROM HOME」も味わい深かった。オルガンとピアノの二人のミュージシャンもビンビン味を出していたが、このうちピアノの方がクリス・ステイントンで、なんと御年81歳と後で知って驚愕した。「CROSSROAD」その他を経て、「コケイン」で本割を締め、アンコールはファッツ・ドミノの曲だったそうだが、大盛り上がりで終わった。80才だし一時間半前くらいで終わりかと思っていたら、もうほとんど2時間に達しようとしていた。「レイラ」も、「ワンダフル・トゥナイト」も、「レイ・ダウン・サリー」、「フォーエバー・マン」「I SHOT THE SHELIFF」も今夜はなし。それでもよいセットリスト。
武道館で10回近い公演をすると言う大風呂敷とは言え、正直、80才のクラプトンにどこまで期待できるのか、と思うところもあった。しかし、それは全くの杞憂であった。スクリーンにたびたびクラプトンのギタープレイの指さばきが大写しになったが、この数十年あまり変わってない。せいぜいちょっと歌い出しに遅れることがある程度で、ギタープレイはなお健在と言ったところであった。初来日した際のジョニー・ウインターが、腰痛で立ってのプレイができず、指さばきも遅れがちであったこと、ジェフ・ベックも、最後に見た際には、やや指がもつれがちのところがあったことを考えると、プレイのスタイルは違うとはいえ、クラプトンはまだまだ現役そのものとの思いを強くした。何より、「HOOCHIE COOCHIE MAN」のようなゴリゴリのブルースナンバーを(それも何曲も)、毎回1万近い日本の聴衆に10日近くにわたって演奏するなどということができること自体、本当に奇跡であり感動的であるし、クラプトンでなければできないことである。
演奏を聴きながら、本当に今の時代に生きていてよかったし、この公演に大枚はたいて来た甲斐があった、などとしみじみ感じ入っていた。
また来年も来て下さい。大枚はたいて行きますんで。
0コメント