この一枚(その1)

◎ 白いレガッタ(POLICE)      


1979年といえば、ロック史的には、2,3年前から勃興したロンドン・パンクの波がさらに膨脹・拡散して、ニュー・ウェーブというシーンが形成され、さまざまな方向から本当にいろいろな流れが、そしてバンドが、アーティストが登場していた。

POLICEは、1977年にデビュー。78年にはファーストアルバム「アウトランダス・ダムール」(英語でも意味不明だそう)を出し、その中から「ロクサーヌ」という曲が、本国イギリスのみならず、アメリカでもスマッシュヒットしていた。レゲエのリズムを取り入れたサウンドで、「ホワイト・レゲエ」などとも称されていた。

このグループのメンバーは、以前にも書いたとおり、ニュー・ウェーブというよりも、アニマルズとかカーヴド・エア等、まさに「オールド・ウェーブ」のグループから結集した。なので、そもそもミュージシャンとしてのテクニックは非常に高く、当時のパンク/ニュー・ウェーブバンドに多く見られた素人っぽさは正直なかった。

しかし、サウンドはまさにニュー・ウェーブのそれであり、そのシーンの中に位置づけられて何も不自然ではないものであった(というより、当時でいうところの「オールド・ウェーブ」的なものにはカテゴライズ不能であったと思われる。)。

このバンドの二枚目のアルバムが、「白いレガッタ(REGATTA DE BLANC)・・これも意味不明の言葉だそう」。

以前にも書いたとおり、一曲目の「MESSAGE IN A BOTTLE(孤独のメッセージ)」は、イントロからして衝撃的であり、一気に引きずり込まれた。当時、ラジオ関東(のちのラジオ日本)で、「全米トップ40」という番組を土曜の夜にやっていたのだが、新たに「全英トップ20」という番組が始まり、その記念すべき第一回のNo.1がこの曲であった(ちなみに、第2回のNo.1は、バグルスの「ラジオスターの悲劇(VIDEO KILLED THE RADIO STAR)」)。

このアルバムは、二曲目以降も良い曲が並んでおり、「BRING ON THE  NIGHT」「WALKIN' ON THE MOON」(これもNo.1ヒット)「THE BED'S TOO BIG WITHOUT YOU」「DOES EVERYONE STARE」~最後の「NO TIME THIS TIME」まで、ほぼ捨て曲は個人的にはない。みなキレッキレのサウンド。何度聞いたことか。

STINGのとても個性あふれるボーカルが魅力的なのはいうまでもない(その後多くのフォロワーを呼んだ。下世話なところでは、MEN AT WORKなんてもろだった。)が、個人的にはANDY SUMMERSのとても細かなギターフレーズと、大変手数の多い、しかしタイトなSTEWART COPELANDの超絶ドラミングも本当に魅力的だった。

翌年春、高校受験をした際に、どこかの高校の試験場で、「孤独のメッセージ」を口ずさんでいる人がいて、日本でも結構人気が拡がっているのかな、などと思った。そう。当時は(そしてこれに続く80年代は)、洋楽が日本では本当に流行っていたのだよ。JPOPなんていう中身が不明なものなど存在しなくて。


POLICEは、その後さらに三枚のアルバムを出し、本当に世界的なバンドになった。最高傑作は「シンクロニシティ」とされているのだろうが、このアルバムは正直完成されすぎていて、個人的にはそれほど魅力的に感じない(「見つめていたい~EVERY BREATH YOU TAKE」が入っているのも気に入らない。)。やはり、1つのバンドがどんどん上昇気流に乗ってブレイクしていくさなかのアルバムに、良いものというのはあるのだ。ちょうどビートルズで、「REVOLVER」を最高傑作という人が、「ABBEY ROAD」を最高傑作だという人よりも(特にコアのファンにおいて)多いというのと同じように。


それでは、また次回(毎週なんて書けないよね)。



ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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