アーティスト探訪~デヴィッド・ボウイその3

ボウイが亡くなってから半年以上が経過した。

昨夜は、久々に「ヒーローズ」を聞いたが、本当にこの時代に生きていて良かったと思わせる、
すばらしいアルバムだという評価は揺るぎない(なお、ついでに、スザンヌ・ヴェガの「solitude standing」も久々に聞いたが、このアルバムもやはりいいね。)

さて。

「aladdinsane」(1973)

このアルバムは、前作よりもアメリカ色が濃く、より明るさが前に出たものだと思うが、グラムロックブームまっただ中の雰囲気もまといつつ、やはりボウイらしい美的感覚に包まれた世界が展開されている。

「watch that man」での入りは、前作とは大きく異なるもの。ここでぐっと引きつけ、「aladdinsane」のやや不気味な雰囲気で流し、そこからのレコード時代の旧A面「drive in saturday」「panic in detroit」「cracked aktor」の三連発がとてもよい。「drive・・」は、ブルージーなミディアムテンポの曲調だが、さびの部分のコーラスの呼応の抜き加減が絶妙。「panic・・」は、ボ・ディドリービート、「cracked・・」は、若干アップテンポなブルージーなビート。ミックロンソンのギターがひずむひずむ。B面にいくと、まず「time」。イントロで流麗なピアノソロ。1940年代のような、退廃的なムードが漂うメロディ。つづいての「prettiest girl」は、「cracked・・」ににたテンポの明るい曲。さらにストーンズの「夜をぶっ飛ばせ」のよりアップテンポなカバーと、ヒット曲「ジーン・ジニー」で走った後で、ラストは、あまりにも美しい「lady grinning soul」。このあたりの構成は、前作にも通じるところがあるが、この大げさとも言うべき終わり方が個人的にはとても好きである。名作。

「pin-ups」(1973)
このアルバムは、ボウイが若いころに影響を受けたと思われる曲のカバーばかりで構成されている。ジギー・スターダストにまつわるツアーを、「ロックンロールの自殺者」を演じて後今後封印する、と宣言したあとだかに出たものだと思うが、ヤードバーズ、ゼム、ピンクフロイド(初期)、フー、プリティシングス等々、60年代のイギリスのバンドの曲が中心。ジャケットも含め、やはりグラムロック時代の風情でカバーされている感じ。まあ、ビートルズのアルバムで言えば、ちょっと違うけど1966年に出た「オールディーズ」(これはベスト盤のようなものだったが)のような位置づけか。要するに、つなぎのようなもの。1曲1曲が短くタイトな演奏。全体で14曲くらい入っていたと思うが、あっという間に終わってしまう。

「diamond dogs」(1974)
オーウェルの「1984」をモチーフにしたアルバム。従前よりもよりトータル性が強いと思われる。ジギーやアラジンほどのインパクトはないが、アルバムとしての質はそこそこ高い。まあ、よりアメリカ色が強くなっている感はある(この後、75,6年ころまでアメリカ色は強まる。)。イントロの「diamond dogs」は、アラジンの1曲目とも雰囲気が似た感じ。その後は、「big brother」、ヒット曲「rebel,rebel」などをポイントに、トータルアルバムとして、独特の世界が展開される。ラストソングは「永遠に回り続ける骸骨家族の歌」とかいう邦題が付いており、なんとも笑える。まあ、個人的には、この前の時代や、ベルリン三部作の時代よりは、好みとしては若干落ちるかな、というところ。

「young american」(1975)
70年代ボウイのアルバムの中で、一番得意でないアルバム。タイトルのとおり、アメリカ色が最も強まった時代のアルバム。そういうこともあってか、きちんと通して聞いたことは数回しかない。まあ、ジョンレノン作の大ヒット「フェイム」とかも入っているし、セールスはそこそこアメリカでもあがってきた(アメリカでは、前作あたりからようやく、アルバムでトップテンヒットを打てるようになったよう)ということもあるけれども、名だたるボウイのアルバムの中では、個人的にはそうでもない、というところ。

次回はベルリン三部作から、ということでもいいが、
次作の「station to station」もよいアルバムなので、ここからにしよう。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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