ライブ・レポート~アラバマ・シェイクス・・・本物の迫力

どちらかというと、米国より英国の音のほうが好きである。
米国ものだと、ブルースやその系統のロック(オールマン・ブラザーズバンドかな)、アメリカン・ハードロック(グランドファンクとかエアロスミスかな)、またフォーク・ロック的なもの(バーズとか)は好みだが、
南部の土着系の、たとえばスワンプ・ロックとか、あるいはザ・バンドのようなサウンド等については、
イマイチ食指が伸びない。
ウェスト・コーストサウンドにしても、ものにもよるが、軽めでさわやか系ないししっとり系(たとえばイーグルスで言うと、ホテル・カリフォルニアとか、ワン・オブ・ディーズ・ナイツ(呪われた夜)ではなく、テイク・イット・イージーとかデスペラード、偽りの瞳のような曲)は、あまり得意ではないのである。

アラバマ・シェイクス。
その名の通り、南部のバンド。
これまでに正規のアルバムは2枚くらいだと思うのだが、
このバンド、特に昨年出た「sound and colors」というアルバムは本当に良かった。
以前にも書いたと思うが、南部の土着のサウンドに止まらず、
オルタナ的なサウンドが展開されている。
そして、何よりボーカル。ブリトニー・ハワードという人だが、この迫力がYouTubeで見る限りでもすごい。
100キロ以上は間違いなくある巨体で、口を大きく開け、顔面を引きつらせて全力で歌う、
まるで、「故中島啓江がジャニス・ジョプリンを歌う」感じである。
歌の力そのもので、「これは・・・」と感じさせられることはあまりないのだが、このバンドについてはまさにそれであった。
今年初めのグラミーでは、アルバム・オブ・ジ・イヤーを取ると予想したが、残念ながら外れた。しかし、私が近年で聞いた数少ないアルバムの中では、ほんとうにピカイチのものであった。

そういうわけで、来日公演へ出向いた(12/12 新木場studio coast)。
今日の公演はソールド・アウトだったらしい。

オールスタンディングではあったが、開演40分ほど前に言ったらまだまだ空いていたので、かなり前のほうへ(席で言えば7,8列目くらいか)。オールスタンディングは寄る年波からきついのだが、「本物」を間近で聞ける期待もあり、比較的若い観客のなかに混じって敢えて前のほうへ(もっとも、隣にいたご夫婦?はもっと年長者だったが)。

バンドは6人編成。ボーカル&ギターのブリトニーのほかに、ギター、ベース、ドラムス、それにキーボードが2人。さらに黒人のバックコーラス(男1女2)が3名。

1時間半程度のライブだったが、期待通り、いや期待以上であった。
ブリトニーは、たぶんゴスペルとかブルースの下地があると思うが、とにかく圧倒的。間近で見るとより圧倒的。そしてみずからギターも操る(gimmi all your loveの、さあこれから盛り上がるぞ、というところで、大事な一音を外したのはご愛敬だったが)。上記したけれども、こういうボーカリスト、ほかにいたかと思えば、やはりジャニスかな、と。また曲によっては、これはオーティス(レディング)かな、などと、偉大な先駆者の姿が頭をよぎっていた。

ジャニスとブリトニー、もちろんかなり違う。
まず風貌。それから、ジャニスについては、亡くなった後からの後追いで聞いたためもあったと思うが、暗さがつきまとっている印象が強いのに対し、ブリトニーは基本的に明るい。曲はシリアスでも、明るさが背景にある。歌は全身全霊だけど、ジャニスのような、まさに「生きながらブルースに葬られ」るような悲壮感はあまりない。この点は、まだこのミュージシャンのことをよく理解してないため(歌詞等をよく見てないため)の部分もあるとはおもうが。
それから、サウンド的にも、ジャニスも「ミー&ボビー・マギー」というゴードン・ライトフット(だったか)のフォーク調の曲をものにしたり(死後だけど)していたが(もっとも、たしか元々ジャニスはフォーク歌手でスタートしたんだったと思う)、ブリトニーないしアラバマ・シェイクスは、上記したようなオルタナ的要素、またある曲では(これは前のアルバムに入っていたのか?)ジェームス・ブレイクのダブサウンドのような風情も聴かれる等、もう少し幅が感じられた。

こんな全米的には大ブレイクしているミュージシャンが、この1000人程度のキャパのライブハウスで、オールスタンディングでの公演というのは、日本での洋楽人気もかなり厳しいものがあるなあ、などと思ってしまったりもしたが、そんなことよりも、まさに「本物」、現在進行形の「本物」を見ることが出来たことは本当に良かった。

ついでに、バック・コーラスにダイアナ・ロス似の人がいたが、彼ら彼女たちとブリトニーとの掛け合いも良かった。
こういった、非常にアメリカ的なバンドで気に入っているのは個人的には珍しい。今後も息の長い活動をしていってほしい。あまり保守的にならないでほしいけど(笑)。でもそうなったほうがアメリカ音楽命!の人たちにはいいのかもね。
観衆とのコール&レスポンスというか、やりとりもアットホーム的で、とてもよいライブでした。
もう少し、歌詞を勉強しておこうと思う。

そういえば、洋楽不人気の中で、ストーン・ローゼズが4月頃に来て武道館でやるようだが、ちゃんとお客入るのかね・・。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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