ライブレポート~なお「現在」に演奏するジェフ・ベックat東京国際フォーラム1/30

1965年のyardbirds「for your love」「heartful of soul」「shapes of things」からもう半世紀以上。

72才のベックが今年も来日した。

最近は、女性のベーシストを従え、また新作ではボーカルをフィーチャーしているとのことだったが、今日のライブも、まさにそのような風情だった。

接見が結構長引き、その後電車の接続が悪く、会場に着いた時点でもう19時の開演5分前。トイレに行こうとしたら長蛇の列。なんと2回連続で開演に間に合わないか・・と思っていたが、開演時間よりも少し遅く始まったので、危なく間に合った。場所柄もあるが、先日のダイナソーとは打って変わって、スーツ姿のサラリーマンの姿が多い。40代から60代がやはり中心。ジェフ・ベック・グループやBBA、「ブロウ・バイ・ブロウ」「ワイアード」のころを知るファンが多く詰めかけていたのだろう。会場はほぼ満席。さすがである。

ベックは、MCをほぼ全くはさまず、淡々と、しかしエネルギッシュなギターを聞かせながら次々と曲を演奏した。大半の曲で小柄な女性のボーカルと、大柄な男性のソウルフルなボーカルを交互に擁し、ダンサブルな、ファンキーな、あるいはソウルフルな曲を連発した。しかし、大半が最近の曲(あるいはカバー曲?)ではないかと思われる。ベックの演奏はこれまでと変わらずエネルギッシュ。さまざまな奏法を織り交ぜての熱演。しかし、なにぶん知らない曲ばかり。なんとなく会場に、戸惑いのようなものが漂っていたのも事実か。

8曲目か9曲目に、お約束の「coz we've ended as lovers」が入り、その後も「ベックス・ボレロ(?)」、「a day in the life」「blue wind」「superstition」等知ってる曲も入ったが、大半は知らない曲だった。まあ途中で男性ボーカルで曲名は分からないがスローなブルース曲が入ったのは良かった。アンコールは2度で計3曲。2度目のアンコールで、「going down」をやり、演奏終了後、初めてベックがしゃべった。メンバー紹介なしで終わるわけないなと思っていたら、一番最後でした。

要するに、ベックはまさに、「現在」に演奏しているのである。「今」を演奏しているのである。今、彼が興味のある音、今演奏したい音を、今まさに感性の合う自分よりもずっと若いミュージシャンといっしょにやっているのである。
観客は、昔のベックの曲をいろいろききたいな、と思ってきている。ちょうどローリングストーンズのライブがそうであるように。ピンク・フロイドやイエス、イーグルス(いずれもフルメンバーでの再結成は不可能になった)のライブがそうであるように。同じ会場でやったcs&nがそうであったように。

しかし、ベックはそのような観衆に日和ることはない。自分がやりたいことをやり、それを自分の昔からのファンにも見て、聞いてほしいのだ。これは、すごいことではないか?もう70代に入ったじいさんである。しかしギターはほぼ昔の音色である。風貌も、遠目と言うこともあるが、ほぼ昔のままだ。

かつてジョン・リー・フッカーが、77才で「boom boom boom」をヒットさせてしまったことがあった。しかし、さすがにその頃のフッカーは、もうまさに「じいさん」という感じのギタープレイだった。
2011年に見た、ジョニー・ウインターは、やはり70くらいだったが、もう、腰が曲がって、立ったまま演奏が出来ないじいさんになっていた。20代の頃の怪しげな風貌の面影は正直なかった。プレイもおぼつかず、そこで演奏してくれているだけでいい、という感じだった。
しかし、今のベックはまったくこの人たちとは違う。まだまだ普通に現役である。
年寄り同士でやってないというのも、本当にすごい。

ベックの5年後、どうなってるか。見たい気がする。

それからひとつだけ。あのベーシストはなかなか頑張っていたのだが、4,5曲目にあったチョッパーを絡めたソロのラインがきれいに聞こえなかったのは残念だった。音響関係の処理がまずかったのではないか。

ああ、もう一つだけ。
このコンサートには関係ないが、レナード・コーエンの遺作が結構良かったような感じ。聞く機会があったら聞いてみよう。

ろっくおじさんの戯言

ビートルズが全米制覇をした年に生まれた男(いちおうべんごし)が、音楽ネタや日々の雑感を綴る。仕事には役に立たないブログ。

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